「陸上ルート」に広がる新たな怒り

関西空港 問題山積

現地リポート

怒り新たに

 十二月三日、関西空港の新飛行経路=陸上ルートが始まりました。貝塚市二色町から入って愛知県河和に向かうコース(当面二十便)と、大阪市から滋賀県大津に向かうコース(同十五便)です。

 「公害のない空港」のため、「陸域は飛びません」という建設にあたっての運輸省の地元への固い約束を反古にした点でも、一度も直接地元住民の意見を聞くことなく、自らの公約を投げ捨てて陸上ルート導入に協力・加担した横山ノック府政の不当な態度にたいしても、新たな怒りが広がっています。

不安消えず

 初日の観測結果は、「予測の範囲」といっせいに報道されました。地元住民も「案外静か」との声が多かったようです。一方、高度は、初日は曇りで測定不能、二日目は七機測定され、いずれも五千メートルをこえていました。

 しかし、翌日のマスコミは、貝塚で六十九デシベルと予測の最高値を記録したことや、岬では従来のコースで七十六デシベルに達したことを伝えています。

 当面河和ルートは国内便に限られ、八千フィート(約二千六百メートル)という制限高度をはるかに超える高さが維持されそうです。それでも気象条件等によれば騒音不安は拭い切れませんし、従来のコースでの騒音苦情も絶えないのが実状です。

 そのうえ、導入が予定されている国際便が大問題です。「制限高度八千フィートのクリアに懸念がある」との声は、パイロットや管制官など、現に業務に携わっている人たちの共通の声なのです。不安は消えるどころか、これからが大変です。

 低周波空気振動による被害への不安の声もあがっています。

課題山積、問題はこれから

 陸上ルート導入で「一件落着」どころか、関空をめぐる問題は山積みしており、府民にとっても、地元住民にとっても、いよいよ大事な時期を迎えます。

@住環境を守るために陸上ルートはもちろん、従来のコースを含めて、騒音公害への取り組みは引きつづいて大きな課題です。
 最終的には同意したとはいえ、地元各自治体のこの面での強い要求は共通しています。監視・観測体制や情報公開、迅速な苦情の解決をはじめ、「陸域進入高度をさらに上げよ」「WECPNL(うるささ指数)六五に引き下げるとともに、一機ごとの騒音規制基準もつくれ」などです。
 阪和線・南海線沿線の騒音・震動・踏切渋滞などの解決も急がれます。

A地域の活性化につなげる
 開港前、「宝の島」のようにふりまかれた夢は見事に破れました。地元自治体がおこなった地元業者対象の調査結果も、マスコミは「関空効果イマイチ」「泉州の企業冷めた声」(「読売」十一月三日付)と報道しています。もちろん私たちは一兆五千六百億円もかける二期事業は、そんなに急がなくても一時凍結し、住民合意の見直しを求めるものですが、少なくとも「地域との共存共栄」を掲げるのなら、二期事業や空港事業に、地元・中小業者も参加できる公正なルールを確立すべきでしょう。

B平和の空港めざして
 新ガイドライン関連の立法化の動きが強まっています。すでに年間約五万人もの米軍兵土などがフリーパスで関空を利用しており、先日は大阪空港に米軍機が一方的に飛来しているのですから、軍事利用を許さない運動と世論の高揚が急がれます。

もっと広く、地域と結んで

 こうした「三点セット」の願いは、自治体・業者・住民など共通の願いです。地域に根ざした運動の広がりがいま求められています。

(古久保暢男・日本共産党阪南地区空港対策委員長)


*大阪民主新報/1998年12月20日付け/現地リポート/古久保談話*