大阪府知事への申し入れ


 

大阪府知事 山田 勇 殿

1998年 6月 5日


陸上飛行ルート反対三者連絡会議

大阪労連阪南地区協議会
公害のない住みよい泉佐野市をつくる市民連絡会
日本共産党阪南地区委員会

 

関空の「陸上ルート導入容認見解」に反対する申入れ

1、 大阪府は5月11日、「専門家会議」の最終報告を受け、「関空協」に対して「陸上ルート容認」の見解を示し、地元各自治体にその受入れを求めました。

 そもそも関空の発着便が、滑走路3本となった際にも絶対に「陸域は飛行しない」ということは、三点セットをめぐる地元自治体の質問への運輸省回答で明記されたところであり、それが前提条件となって地元との間で関空建設が合意されたのです。大阪府自身も、府民向けパンフで「陸域は飛ばない」旨を広く府民に広報したことなどを含め、この経過は誰も否定できない明白な事実であり、府当局との交渉でも確認してきたことです。今になって「『努めて海上を飛行』『低高度で陸域を飛行しない』ことが三点セット」などと言ういいわけは通用するものではありません。

 今回の大阪府の見解は、こうした経過や「変更の許されない前提条件」('89年、岸知事国会陳述)と自ら主張していたことにも背くものであることは明白であり、極めて遺憾です。この「見解」の撤回を強く求めるものです。


2、 大阪府が受け入れの根拠とした「専門家会議」の最終報告についても、多くの問題が含まれています。

 (1)「専門家会議」は、飛行経路問題を「地元が空港建設に同意した基本に係る問題」と認めながら、一度も直接地元住民の意見を聞くことなく、結局は運輸省の主張を容認する報告をまとめました。「基本に係る問題」即ち関空建設の前提条件の変更を求める報告をまとめるのであるならば、もっと慎重な議論と手続きが必要だったのではないでしょうか。

 その上「会議」の中で出された委員の皆さんの意見が、最終報告にどう反映されたのかも疑問を感じざるを得ません。


 (2)もし「専門家会議」が「前提条件」の重要性を認めているのでしたら、この条件、つまり「海上ルート」を堅持した上での“混雑解消”の方途を厳しく追求し、検討することが求められたのではないでしょうか。

 例えば「総合的な取り組み」で示された、着陸機の調整点のマヤポイントへの移動、発着機の交錯を避けるための飛行コースの分離、などは検討可能な問題ですし、空路出入口の管制能力の拡大のため、管制官の増員なども追求すべきだったと思われます。

 (3)「専門家会議」は、関空が「世界第一級の国際ハブ空港」を前提に建設されたかのように述べ、そのために「増便」を絶対条件として検討されています。

  しかし、「国際ハブ空港」などということは、建設合意当時議論されたことはありません。それは'80年代の終り、関西財界が持ち出してきた議論です。

  そもそも「国際ハブ空港」とはいかなる機能をもつ空港なのか、日本に複数の「国際ハブ空港」が必要で、しかも存在可能なのか、関空が「国際ハブ空港」足り得るのかなど、納得できる議論なしには科学的検討といえないのではないでしょうか。

 (4)最終報告は「運輸省の『環境面の特別の配慮』が実行されれば影響は最小限にくい止めることが可能」と述べ、陸上ルート容認の根拠の一つにしています。

  しかし、開港以来多数の騒音苦情が寄せられ、その解決が“現在の問題”として要求されていたにも限らず、ルート変更に関係なく実施し得る措置(例えば「ディレイドフラップ方式」「監視体制の強化」「苦情処理体制の強化」など)をなぜ採用しなかったのでしょうか。

  また「航空路誌(AIP)に記載するので高度の確保は可能」と述べていますが、それではAIPに記載されているのに岬町附近で何回も生じているコース逸脱がなぜ防ぎ得なかったのでしょうか、これを運輸省が何故指導しなかったのでしょうか。

  こうした問題への厳しい究明を行なうのが「専門家会議」としての当然の責務ではなかったでしょうか。

3、 いづれにしても、地元での協議・検討が始まります。大阪府は、「2期工事の年度内着工」などを理由に結論をせかすことなく、地元自治体に対して、十分な住民への説明・意見聴取の機会と時間を保障するよう強く要求します。

  大阪府は、地元自治体の議会決議にこめられた“関空建設の前提条件堅持”の立場に立ち戻り、「陸上ルート導入容認」見解を撤回されるよう、重ねて求めるものです。

      以  上