<しんぶん赤旗日曜版・2005年1月9日付け>

大阪湾に沈む457億円

関空2期工事   懲りない無駄遣い

国民に大増税の一方で

 「財政再建」を理由に国民には定率減税の半減など年間2兆円の負担増を迫る一方で、無駄な大型公共事業には大盤振る舞い−−。05年度予算案での関西国際空港2期工事等への税金投入457億円はその典型です。これでどこが「聖域なき構造改革」(小泉首相)か。
                     今田真人記者


 東京の羽田空港からジェット機で一時間15分。大阪湾に浮かぶ関西空港(1期空港島)に着きます。大阪府南部の泉佐野市と連絡橋(3・75キロ)で結ぶ人工島(埋め立て地)に造られ、3500メートルの滑走路をもつ国際空港として開港、ことし11年を迎えます。

 2期工事は、この1期空港島の沖合を埋め立てて人工島を造り、そこに2本目の滑走路を走らせるというもの。総事業費は当初見込みで1兆5600億円(国・地方・民間合計)にのぼります。

 2期工事の予算化には、政府の財政制度等審議会が、需要予測の低迷などを理由に「慎重であるべきだ」との「建議」(04年11月19日)まで出したように、政府の中からも批判の出ている代物です。それなのに、谷垣禎一財務相と北側一雄国土交通相(公明党)が予算化をごり押ししました。

    ◇    ◇  

 日本共産党の宮原たけし大阪府議団長は「2期工事推進は間違いです」と、その理由を二つあげます。

 一つが需要予測です。関西空港を利用する航空機の発着回数は、これまで4回の政府予測を実績値がことごとく下回ってきました。(グラフ)

 05年度予算案の前提とされる「07年度に年間13万回程度」も、実績をみれば根拠がありません。
 しかも、05年2月には中部国際空港が、06年には神戸空港がそれぞれ開港を予定。関空の1本目の滑走路の処理能力は「年間16万回」です。これを超える利用の見込みはほとんどありません。

 「危うい需要予測など将来性への疑問が膨らむ」(「朝日」04年12月21日付)、「関空、甘い需要予測」(「日経」同11日付)など、一般マスコミも指摘しています。

    ◇    ◇  

 宮原府議のあげる理由の二つ目が、関空2期工事は「民間活力方式」ですすめられることです。巨額の地方自治体負担が求められ、そのしわよせが住民におしつけられていることです。2期工事は04年度までの累計で国は3365億円を、大阪府は同累計で935億円を負担(いずれも利子分を除く元本ベース)し、府の負担は1期、2期を含めれば1700億円近くにのぽります。

 大阪府の借金は4兆9300億円にのぼり、財政再建団体への転落寸前です。府は昨年9月、この借金のつけを、全国一高い高校授業料の値上げやあらゆる福祉切り捨てなど府民に押し付ける計画を発表しています。

 関空の対岸の自治体の一つ、泉南市で喫茶店を営む福井滋二さん(64)は「国や自治体は、関空2期工事や関連事業にごっつい税金を投入してきました。そのために、住民のための予算がどんどん切り捨てられています。しかも、これからは消費税増税という。どうなっているのか」と怒りをあらわにしています。


公明幹事長笑みの意

 「無駄を省いた『財務省原案』」−−「公明新聞」(04年12月23日付主張)は予算案をこう絶賛しましたが、関空2期工事の予算化には一言もありません。関空は聖域といわんばかりです。

 2期工事受注企業からは、自民・公明らの国会議員26人に、99年から3年間で総額3596万円の献金があったことが、日本共産党の国会遣及で明らかになっています。献金効果抜群です。

 しかし、奇妙なことも。関西財界の代表が昨年秋、公明党の冬柴鉄三幹事長に、2期工事推進を要請しました。同紙の報道(04年11月18日付)は、要請を受けたことは伝えたもののどう答えたかにふれない記事でした。

 ただし、写真には、関西経済連台会の秋山喜久会長から満面の笑みで要望書を受け取る冬柴氏が写っています。

 与党関西国際空港推進議員連盟の顧問である冬柴氏が沈黙とは。

 無駄遣いという世論の批判の手前もある。かといって献金は受けている。「満面の笑み」は窮余の策だったとしても、口よりものをいう?


中止早ければ損失少ない

奈良女子大学助教授中山徹さん

 関空2期工事は、日本の航空政策をどうするのかの議論抜きに進められているのが問題です。成田、中部、関西と、複数の拠点空港をつくるような国は、米国のような広い国だけです。

 また、民間会社も出資する第三セクター会社が1期・2期工事とも、多額の借金で進めています。これでは利子負担が大きく、いつまでも借金が返せません。こういう公共事業のやり方も見直しが必要です。

 大型公共事業で、地域経済が自律的に回復したところはありません。無駄と分かっていても巨額の金をすでに役人しているので、仕方なく続けているようなものです。

 企業であれ、個人であれ、続けても展望がない事業はすぐ中止するのは当たり前です。早くやめれば、損失は少なくてすみます。2期工事はいったん凍結すべきです。