<しんぶん赤旗、2005年4月19日付け、3面>


武力で平和成り立たない

 勇壮な「だんじり祭」で知られる大阪府南部の岸和田市。人口20万人のこの街で今月はじめ、「九条の会・きしわだ」が発足しました。賛同者は1600人を超え、市長や宗教者が名を連ねます。  (和田肇)

「九条の会・きしわだ」発足
宗教者や市長ら1600人が賛同

 三百三十年余の歴史をもち、歴代岸和田藩主の墓がある臨済宗泉光寺。その副住職、岸田俊昭さん(四五)は「九条の会・きしわだ」の賛同者です。

 「はっきり言えるのは、武力によって平和は成り立たないということ」と穏やかに語ります。檀家(だんか)には、家を建てるときに例えて平和の思いを伝えています。「それぞれが違う物差しで寸法を計ったのではずれた家ができてしまう。お互いを理解し、寸法を合わせていけば、狂いのない家が建つ。つまり相手を理解すること、許すことが大切です」

昨年から準備

 「九条の会・きしわだ」は昨年十一月から結成に向けた準備を進め、賛同者を募りました。「名簿が手に入ったすべての人にはがきを送った」と事務局の朝倉忠さん(六六)はいいます。

 町会長、医者、文化人、宗教者、教育委員、農業委員…。あわせて千九百通。三月末には新聞四紙五万六千部に折り込み広告を入れました。はがき、広告を見て、電話やファクスで賛同の声が続々と寄せられました。「目的一緒やな」「賛同したら何するんや?」

 はがきの「ひとこと」欄にはびっしりとメッセージ。およそ三百を「ひとこと集」としてまとめました。

 「九条への思いはものすごいもんや。今まで知らんかったところにも平和の願いがある」と朝倉さん。

 一方、広告を見た男性から「自衛隊がなくてホンマに大丈夫なんか。北朝鮮が攻めてきたらどうするんや」という電話がかかってきました。「そういう考えの人もいる、という面もしっかり見ていかなあかん」。表情を引き締めました。

 同会事務局が「思いもよらなかった」というのがNGO(非政府組織)の賛同でした。人権擁護団体アムネスティ・インターナショナルのグループを地域でつくろうと活動している「アムネスティ岸和田準備会」です。

 準備会のメンバー三人は日ごろ、「戦争はいちばんの人権破壊。いま、九条が焦点になっている。地元で九条を守るために何かしたい」と話し合っていました。昨年末、参加した学習会で「九条の会・きしわだ」が発足すると聞きました。「宗教や信条の違いを超えて、九条を守るためにたたかわなければ」と三人とも賛同者になりました。

 同準備会の関文(ふみ)さんはいいます。「地域でこまわりのきく九条の会が結成されたことは大きい。私たちも人権擁護の立場から学習会などで運動を広げたい。身近なネットワークがいくつもできたらいいと考えています」

戦場に送るな

 千六百人を超える賛同者のうち、七百人以上が教職員です。幼稚園から高校まで、同市の教職員総数は千二百人。およそ六割が賛同していることになります。

 「教え子を再び戦場に送らない、の思いに尽きます」というのは独自に賛同者をつのる署名用紙をつくって訴えてきた岸和田市教職員組合の三宅良夫書記長。「私たちは毎日、職場で子どもたちを見ている。教育で子どもを戦場に送ったという過去の過ちを繰り返してはいけない」

 職場で、手から手へ、署名が回されました。「訴えたところでは、ほとんどの人が応えてくれる」(三宅書記長)といいます。

守らなあかん

 四百人が会場をうずめた二日の発足集会では、元米海兵隊員のアレン・ネルソンさんがベトナム戦争の体験を語りました。賛同者の一人、谷ロ俊美さん(六〇)は、「戦争って怖い。想像以上です。ネルソンさんの、人前で講演する勇気と生き方に感動しました。子どもたちに同じ体験をさせたくありません」。

 事務局の朝倉さんはいいます。「九条を守らなあかんと思ってる人はまだまだたくさんいてる。今までの活動にとどまっていたらダメ。どれだけ多くの人に働きかけ、話し合えるかにかかっている。これは『九条を守る』という意見を、国民過半数にする運動です」

 会は有権者過半数の八万五千人から署名を集める運動を進めています。


岸和田市長が本紙にメッセージ

 八期三十二年、市長を務める原f(のぼる)市長(八二)も「九条の会・きしわだ」の
賛同者です。 市長は本紙に、次のメッセージを寄せました。


 世界の平和を祈り、戦争のない世界の実現を訴える皆様の取り組みに敬意を表します。

 真の恒久平和は人類共通の念願であり、その実現には市民レベルでの取り組みが重要となっています。

 私も、自ら戦地に赴いた経験があり、その悲惨さは筆舌に尽くしがたいものがございます。戦後半世紀以上経過し、今、平和であることのありがたさをしみじみかみ締め、生ある限り、悲惨を極めたあの大戦を教訓に、恒久平和の実現に努力してまいりたいと思っております。

 しかしながら世界には依然として大量の核兵器が存在し、各地の紛争が絶えず、恒久平和の実現は容易なことではありません。

 地道でたゆまぬ努力を続け、戦争のない平和な世界の実現に向け頑張りましょう。